no.1

胎盤関門の栄養物・薬物輸送機構の解明

 
  1−1.マクロライド系抗生物質(エリスロマイシン)  
 
 マクロライド系抗生物質のErythromycin (EM)は胎児への移行率が小さく比較的安全性が高いことから妊婦の感染症の治療薬として用いられています。しかし、妊娠時にEMを服用していた妊婦から生まれた新生児の一部に幽門狭窄症になるリスクが増加するという報告があり、EMの胎盤透過機構の解明は重要です。そこで本研究では血液-胎盤関門のin vitroモデルとして条件的不死化syncytiotrophoblast細胞株(TR-TBT 18d-1)を用いてEMの輸送機構を解明することを目的として研究を行っています。
 EMのTR-TBT細胞への取込み輸送は主にトランスポーターが関与し、胎盤細胞の刷子縁膜小胞をもちいた解析により、その輸送はプロトンとの交換輸送であることが示されました。さらにTR-TBT細胞からのEMの排出機構もプロトンと連動しているとの知見も得られています。これらの結果はEMの胎盤での動態にプロトン交換型トランスポーターが重要であることを意味しています。

発表論文:
Sai Y, et al., Drug Metab Dispos. in press
 
  1−2.核酸および核酸類似薬(ジドブジン)  
 
 核酸は胎児成長に必要な栄養素であり、また胎盤の血管収縮制御に一部関与します。
核酸構造を有する抗HIV薬のzidovudine (AZT)は垂直感染防止のため妊婦にも投与されますが、胎児毒性を示すことが報告されています。これら核酸類の胎盤透過に関与するトランスポーターの解明は、胎児成長、胎児毒性の観点から重要です。
 核酸であるadenosine、uridineの胎盤透過にはENT1(SLC28A1)、ENT2(SLC28A2)が関与し、それぞれの寄与率を評価しています。またAZTの胎盤移行には主にトランスポーターが寄与しますが、上記のトランスポーターの寄与は少なく、新規のトランスポーターが関与していることが示唆されました。

発表論文:
Sato K, et al., Placenta. 30(3):263-269.(2009)
Nishimura T, et al., Drug Metab Dispos. 36(10):2080-2085.(2008)
Sai Y, et al., Pharm Res. 25(7):1647-1653.(2008)
Chishu T, et al., Placenta. 29(5):461-467.(2008)